岡崎体育とさいたまスーパーアリーナ
バンド音楽をぶち壊す珍獣
音楽シーンの移り変わりはとても早い。
どのくらい早いかと言うとTwitterで共同垢をつくるカップルの別れくらい早い。
フェスの出演アーティストなどを見ると何十年も活躍してるベテランバンド、タイアップなどメディアの力も相まって世間の認知度が高い中堅バンド、そしてフェスやライブハウスを主戦場にしせめぎ合う若手バンドという構造が見えてくる。
フェスが流行りニッチな音楽ファンだけでなく、レジャーとして楽しむ人達が増えて来た頃に流行りだしたのが「四つ打ち」「振り付け」「合唱」などオーディエンスが一体感を持って盛り上がれる音楽だ。
そういった音楽が飽和している状態である種のカウンターパンチを食らわせるかのように台頭してきたのがSuchmosやOfficial髭男dism、King Gnuだ。ひとり酒でも飲みながらゆっくり聞くのもいいよね的な。(いや、こんなこと言ったらファンの人達に怒られそうだが…)
そんな構造の中でバンドはせめぎ合っている。
どんなバンドが生き残るかと言うと濃い音楽性とキャラで他のバンドと差別化されているもの。
そんな能力を持った若手バンドはどんどん上へ登りつめていく。武道館やってアリーナツアーしてどんどん市場をでかくする。
細かく分析していくとそれだけでひとつの記事が出来上がりそうなのでそれはまた別の機会にでも取っておくとして…
今回はそう。
岡崎体育という珍獣の話。
爆発する個性
おそらく岡崎体育と出会うとしたら、「Twitterのタイムラインに流れてきた冷蔵庫のメモを英語風に読み上げてる動画」や、「ミュージックビデオあるあるを面白おかしく歌った曲」だろう。
もしかしたら、ゴリゴリのロックだと思って聞いたらワニさんが可哀想な曲だったかもしれない。
いずれにせよネタ曲を書く面白い太ったおじさんという認識で初めましてをしたはずだ。
でも、アルバムを通して聞くと気づくのだ。
「あ、この人ネタ曲の人じゃねえ」と。
このギャップ感は他のバンドもやってるから珍しくないが振り幅がえぐい!鴨川等間隔、エクレア、式とかえぐくないですか!?ねえ!!
バックヤードにシティポップ好きや大合奏バンドブラザーズでの作曲経験が打込みに生かされてるので音楽性はバツグンである。それを一人でやってるんだから本当にすごい。
そしてあのビジュアルでコミカルに踊ったりするもんだから面白いに決まってる。
弱者を演じる力と共犯性
音楽性と個性は十分あることが分かった。
でも、それだけでは岡崎体育というシーンはつくれない。
ファンを着実に増やさなければならない。
ファンを増やすにはカリスマ性で人を集め導いていく方法があるが岡崎体育にはミスマッチだ。
岡崎体育の場合は弱者であることが大事だった。
弱者というと語弊があるかもしれないが、ファンと近い存在であるべきだし、なんならつい応援しちゃうくらいがちょうどいい。
今は違うが、スーパーでアルバイトをしている実家暮らしのポッチャリさんが自室の学習机で曲を作っている。
そりゃあ応援したくなるやん!
バンドではなくソロでやってるからこそこのつい応援したくなっちゃう感じがいいのだ。
そしてそのつい応援したくなっちゃう肉だるまさん(さすがに失礼)には大きな野望がある…
「さいたまスーパーアリーナでのワンマン!」
常にこの夢は覚悟として語られてきた。
絶対にさいたまスーパーアリーナでワンマンライブをやると。
毎年GWにさいたまスーパーアリーナで開催されるフェスから声がかかったにも関わらず、「初めてはワンマンで」ということで屋外ステージに出演するこだわりっぷり。
この一貫した姿勢が、夢がファンの心を離さないのだ。
出始めた頃は「何言ってんだこいつ笑」くらいにしか思われてなかったが、だんだんと「あれ、もしかしたら…」と。
ライブで「さいたまスーパーアリーナで絶対にワンマンをします!」「絶対に見届けてください!」と言葉にする度にそこには共犯性が生まれる。ファンには一緒に夢を叶えてる感覚が芽生えるのだ。
まとめ
岡崎体育は本当に賢い。
音楽性とキャラ、そして移り変わりが激しい音楽シーンの中で自分を売り込む方法を分析する賢さを備えている。
口にした言葉には魂が宿る。
「さいたまスーパーアリーナでのワンマン」には言霊が宿っている。なんとなくの憧れで言っているのではなく、本気でさいたまスーパーアリーナのステージに立とうとしている。
この記事を書いている2019年6月9日に岡崎体育はついにさいたまスーパーアリーナでワンマンライブをする。
チケット持ったしグッズも買った。
夢が叶う瞬間を見届けたいと思う。